[00:05.69]静かだった、
[00:10.59]僕は夢にうなされ、
[00:15.79]なんども目を覚ますたびにそう感じた
[00:25.16]天上の闇の中に浮かびがる幻影は、
[00:32.49]人ひとりの力では支えきれず、
[00:40.61]重くのしかかってくる
[00:47.88]ただ痛みも苦しさもなかった
[00:58.98]恐怖という潜在意識のみがそこにあるだけで、
[01:06.95]ありとあらゆる不幸が
[01:09.90]目の前で手を広げていたが、
[01:17.60]とても静かだった
[01:24.70]彼女は僕の腕の中で小さくくるまり、
[01:33.54]そして、二人はびっしょり汗にぬれていた、
[01:45.81]僕は彼女の夢のために
[01:50.36]彼女の髪をなで、
[01:55.50]彼女がほんの少し目を覚ますと、
[02:02.84]僕は言葉を選んでこう言った
[02:12.56]平気かい
[02:15.89]幸せかい
[02:19.80]怖くはないかい
[02:27.02]そんな台詞を口にすればするほど
[02:33.73]愛は冷めてゆく
[02:41.75]それは別に、
[02:46.23]彼女のせいじゃない
[02:52.60]彼女の嘘は今夜はじめて出合った時から
[03:01.21]わかっていたことだから
[03:09.82]どんな女にも必ず嘘はつきものだ
[03:21.39]しかし僕はいったい何を探していたのか、忘れてしまう
[03:38.64]愛のほかに何のための言葉を探しだすと言うのか
[03:52.73]しかし僕自身、どれほどその言葉を必要としたことがあったろう
[04:14.14]そして彼女は目を覚まし、こう言った
[04:25.78]優しさすら嘘になることも、もう知っているのに
[04:40.24]狭い小さな店の常連の顔が、グラスの中のアルコールの上に浮かんだ
[04:58.60]無理して笑おうとするみたいな店のライトの中で、
[05:06.02]人々はひしめき合っている
[05:16.74]僕は壁にもたれ、店中の誰よりも今夜は怯えていた
[05:35.70]刺激が欲しいといって男は彼女の胸に甘えていた
[05:50.85]破れたストッキングを履いたその彼女は、
[05:57.38]僕にたくさんの言葉で少しだけ話しくれた
[06:09.34]わかるはずないけど、
[06:14.22]何が幸せかっていったら自分らしさしかないともう
[06:27.61]その言葉がとても冷たく聞こえたのは、
[06:36.37]僕が怯えていたせいだろう
[06:45.66]彼女はひとつも笑顔を浮かべたりはしなかった
[07:01.31]ねぇ、じゃぁ、最後にひとつだけ教えてくれるかい
[07:14.74]今、君は幸せかい
[07:23.91]男が起き上がって言った
[07:31.92]俺にとってみれば幸せなんて求めていたらきりがないだろうね
[07:53.73]僕は部屋のガラクタにさよならをした
[08:03.13]