[00:10.194]「わかれよう」
[00:14.188]言い出したのは僕のほうだ。
[00:19.192]はづみといえばはづみ、
[00:21.945]でもその時二人の間に積りに積もったなにかが、
[00:27.948]音を歌ってて弾けた。
[00:34.692]「わかれよう」
[00:38.444]食事が終わった後のテーブル、彼女は散らばったパン屑を、
[00:46.443]ジッと見つめていた。
[00:51.947]
[01:04.939]彼がその話を切り出すのはなんとなく分かっていた。
[01:10.442]でも、いざ言われると、涙が込み上げた。
[01:17.444]あたしは思い出していた、誕生日とか、クリスマスとか、
[01:24.444]そんな特別な日のことではなくて、
[01:28.450]いつもの彼との日々。
[01:32.943]待ち合わせは大体あたしは遅れていて、
[01:35.951]彼が先に飲んでいる。
[01:38.946]あたしがその席に座って、お店の窓を少し開ける。
[01:44.692]彼が聞く、今日は仕事どうだった。
[01:50.195]やさしく、いつくかの季節が通り過ぎた。
[01:56.443]だけど……
[01:58.198]
[02:09.447]楽しそうな町が胸を締め付けた。
[02:16.447]あたしも彼も一度決めたことを簡単に変えがしない。
[02:22.451]わかれよう、
[02:24.693]その決意が崩れる可能性は限りなくゼロに近い。
[02:33.445]彼女の横顔、そんなり言い歩きながら見るのは、
[02:40.946]たぶんこれが最後だ。
[02:43.954]何か言いたいけど、駅が近づいてくる。
[02:51.953]
[02:56.446]「じゃ、仕事頑張って。」
[03:05.445]「うん。じゃ、ここで。」
[03:14.200]わたしは一瞬笑顔を作って、
[03:18.705]それからくるりっと背を向けて、
[03:21.954]改札を向かって歩き出した。
[03:25.949]涙がこぼれないよう、ちょっと上を向いて。
[03:30.953]
[03:34.205]僕は彼女が人ごみに消えるまで、
[03:39.950]見慣れてる後ろの姿を、
[03:42.204]見つめていた。
[03:49.705]
[05:45.399]<歌>
[05:47.142]
[05:47.396]あの日から一ヶ月、北風が冬を運んできた。
[05:53.898]僕は仕事に打ち込んでいる。
[05:57.895]でも、
[06:00.146]彼女の最後の笑顔が、時折胸の奥を刺激した。
[06:08.645]聞こえないはずの声が、どこかで響いている。
[06:17.643]なんでことだ…
[06:20.396]わかれようと言い出したのは僕のほうだ。
[06:24.145]なんでことだ。
[06:28.396]いまさらやり直したいなんて男らしくない。
[06:32.144]だけど、僕はメールを書いた。
[06:40.402]
[06:49.098]「大事なことにやっと気づいた。
[06:50.350]君と話したい、なんでもないことを話したい、
[06:56.354]今日あとたいろいろを、一日の最後に話たいのは、
[07:01.845]キミなんだ。
[07:06.096]人生で最大のミス、挽回するチャンスをくれないか。」
[07:14.349]
[07:17.602]もう一度あの店で会いたい。できれば、初雪が降る前に。
[07:30.095]
[07:33.347]まったく。
[07:37.350]「じゃ、いつものお店で。」
[07:42.845]1時間後、あたしがメールを返した。
[07:48.602]
[07:57.600]彼女はボクを受け入れくれるだろうか、
[08:03.104]こんなり勝手で、どうしようもなくて、やさしくなくて、
[08:12.347]いや、やさしくあろうとは思うけれど、うまくできないボクを……
[08:22.098]
[08:23.354]カフェの窓から見える、雲の切れ間、
[08:31.853]冬の月が輝いている。
[08:37.856]神様、ボクに少しの幸運を、二人に少しの幸運を……
[08:47.353]
[08:53.855]「ごめん、遅れちゃった。」
[09:01.098]遅れてくるのはいつも通り。
[09:04.604]でも、いつもと少し違う顔だ。
[09:09.354]
[09:11.107]「大丈夫、大丈夫。」
[09:13.349]「今日も仕事忙しかった?」
[09:21.360]そしてボクは話始めた。
[09:29.601]ゆっくりと、彼女の心の真ん中に届くように。
[09:39.856]
[09:44.603]<歌>