斉藤和義という人は、声自体が看板だ。どんなに不穏な内容の歌を歌っても、どこか人懐っこく温かい声が、そんなに肩肘張ってもしょうがない、自分はホントはどうしたかったのか考えてみよう、なんて気持ちにさせる。そんな稀有な声の持ち主も2003年夏でデビュー10周年。その節目を飾るのは、「何処にもない場所」という意味のタイトルが付いた本作。NYの腕利きで、久々の共演となるマークリボーやロバートクワイン、キースリチャーズのエクスペンシブワイノーズにもいたチャーリードレイトンらとの貫禄(かんろく)たっぷりで、実験精神にも満ちた8ビート、玲葉奈とのおなじみ「五秒の再会」、本作への布石になった「やわらかな日」など全14曲。(石角友香)